2013年8月3日土曜日

埼玉県立浦和図書館に行きました

日本エクステリ学会の調査で必要な本を借りるために浦和の県立図書館に行きました。本は久喜の県立図書館の蔵書ですが、事前に依頼しておくと最寄りの図書館に送ってそこで受け取ることができます。便利なシステムです。

県立浦和図書館に行くのは久しぶりです。今年の初めにも行きましたが夜本を返しに行っただけで内部外部を見るのは何十年ぶりかもしれません。

図書館の隣には埼玉が誇る名建築、前川國男の埼玉会館が建っていますが、その洗練されたデザインとは全く異なる骨太な作風です。もしもこれも前川國男の作品だったらびっくりということで調べてみると埼玉県の建築課の職員(技師)による設計ということです。

埼玉会館の完成が1966年、県立図書館の完成が1960年なので、この図書館ができてしばらくしてあの大建築が完成したということになります。技師は柳武氏という方だったそうですが建築課の職員という立場上、隣にどんなものができるか十分に知っていたことでしょう。

さて肝腎の建築ですが、「びっくり」と「がっかり」の融合というか併存です。


図書館の入口は埼玉会館のペデストリアンデッキと一体となった人工地盤からアクセスします。図書館エントランスとは何と3階で階段だけ。今日の公共建築では考えられない「がっかり」です。役人が建築計画で間違えてどうするのって感じです。


図書館とは思えない大階段にこれは「びっくり」。外階段と建物の間にはサンクンガーデンのような彫り込まれた空間があります。この辺りは1960年代から1970年代を感じますね。


柱梁の骨太な表現に「びっくり」です。木造軸組のRCラーメンによる表現です。RCの表面は合板ではなく挽板なので木目が反転されて木造に通じる質感を感じさせます。迫力があります。


最大の「がっかり」は外装のこの茶色です。どうも建築完成後ずいぶん経ってから外装のメンテナンスで赤茶色の撥水剤を塗られたようです。高校生くらいまではRCの色だった印象があります。木造の表現でRCの表面に木目があるから茶色?おそるべき陳腐な発想です。


建物の内部は雑然としていて読書の空間というよりは市役所の一部のようで「がっかり」です。当時は本があり、借りられることが価値であり、読書する、学ぶといったことは考慮不足だったのでしょう。カーンのエクセター図書館などと較べると超がっかりです。


階段の手摺というか欄干の意匠にはデザインの形跡が見られます。その内側に現在のバリアフリー基準の手摺が付いているのが「がっかり」です。介護保険の改修みたいです。


階段室周りのコンクリートの壁は当時の質感が窺われます。「びっくり」する力強さを感じます。この質感を活かすように外観を保存して、内部はモダンな読書に専念できる空間に改修すればよかったと思います。次の改修ではそうなってほしいですね。このひどい茶色を除去してフレッシュなコンクリート打ち放しに戻す技術と製品が今はあるはずです。


素晴らしい「びっくり」です。図書館の入口に向き合っているコンクリートの壁です。挽板と細い材の組み合わせです。素晴らしい力感です。最近のおしゃれな杉板打ち放しがはずかしいです。


連続する階段脇の壁も同じです。わが家の門塀もこんな感じにしたかったのです。この壁を見られただけでも図書館に来たかいがありました。

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