大きく庇を張り出し、鉄骨の軽快な架構と大きな開口部、一目でそれとわかる環境共生型の建築です。しかも木材をふんだんに使った外装がつるつるぴかぴかのモダンデザインではなく周囲の緑となじむ雰囲気を創り出しています。
ぱっと見た瞬間、これはアメリカ人のデザイン、或いはアメリカで専門教育を受けた建築家の設計だと直感しました。しかもこの庇の長さはカリフォルニアバンガローの現代的な解釈ともいえます。あの有名なパサディナのギャンブル邸の佇まいと重なります。
今日帰ってネットで設計者を調べてみると、台湾の九典連合建築師事務所の設計だとわかりました。事務所を主宰する二人の建築家はともに台湾の國立成功大学を卒業して一人はペンシルベニア大、もう一人はUCLAで建築を学んでいます。どんぴしゃで推測が当たりました。しかもパサディナといえばUCLAの目と鼻の先です。ギャンブル邸の影響があったのは間違いないでしょう。
新北投の駅からすぐに北投公園です。観光名所がすぐそばに点在しています。
ぐるっと建物の周りの遊歩道を回ってメインエントランスにやってきました。木造のような鉄骨造のような不思議な雰囲気です。
板張りの外壁と開口部周りの方立てが一つのリズムを創りだしています。
大きな開口部、木製のカーテンウォールみたいです。ガラスは全てエネルギー効率の高いLow-Eタイプです。林口で建物を設計しましたがこのような大きなガラス面を設けると省エネルギー計算がどれだけ困難か実感しました。この建物もさぞ大変だったと思います。
面白いのはこういう出隅のコーナーの扱い。これはどう見てもF.L.ライトです。屋内にも随所にちらちらライトへのリスペクトが見られます。フィラデルフィアとロサンゼルスで学んだのなら当然そういうことになりますね。
この庇の長さやオーバーハングのバルコニー、落水荘?と思ってしまうような設計も随所に見られます。それにしてもこの色合いの落ち着き方。すばらしいです。
ポスターや建築作品として紹介されるときに必ず使われるアングルです。深く広がりのある庇がよくわかります。
これもよく紹介されるアングルですね。後ろに見える建物は有名な温泉旅館の加賀屋です。
それでは内部を見て行きましょう。本来屋内での写真撮影は禁止なのですが、目的と身分照明を提示すれば許可が下ります。最初にあるのが緑建築の認証です。最高ランクのダイヤモンド級です。成功大学の緑魔法学校と並び証されるダイヤモンド級の環境共生建築ですね。
エントランス階から下階に降りてゆく大きな階段が暖炉に向かう巨大な舞台装置になっています。所々で段板がソファになっています。利用者さんは気ままに腰掛けて本を読んでます。
階段の下から屋根の延びる3本の鉄骨の柱が屋根の架構を支えています。森の樹木の象徴ですね。仙台メディアパークが平地の大木であるならば、こちらは山間の大木といった感じです。
最上階は屋根の形状がそのまま現れたダイナミックな空間です。エントランスから下階に降りる階段と、この最上階の閲覧室がこの図書館の内部空間の見せ場と言っていいでしょう。
なだらかな勾配の屋根が示すように最も高くなった屋根の下の巨大なクリアストーリーから光が入ります。こういった空間を設計する際に実は難しいのが空調計画です。普通は天井裏に機器を納めてダクトを引き回しますが、この図書館では適当な間隔で建っている照明器具を内蔵した柱状の造作が空調の吹き出し口になっています。この日は気温が32度まであがりましたが、内部はとても快適でした。見事な空調設計ですね。
木質感たっぷりのインテリアに大きな開口部、窓の外には一面の緑、周辺の環境と一体になった建築です。台北市と建築家はすばらしい仕事を成し遂げたと思います。
開放的な空間と対照的な壁と垂直方向の光で構成された空間です。
外観を特徴付けているバルコニーです。直線にしてしまうと日本のマンションみたいになってしまうのですが、蛇行したり手摺のデザインを工夫するなど随所に配慮が見られます。
巨大な庇を支える方杖もデザインの一部になっています。屋外でのんびり本を読むのもいいですね。今度は建築の見学ではなく読書をしに来てもいいかもしれません。
曲がりくねったバルコニーはその先へその先へと歩きたくなってしまいます。屋上も緑化されていますが今回は残念ながら見ることが出来ませんでした。それでも見所たっぷりです。近いうちにまた来たいと思います。今度はゆっくりのんびり空間に浸りたいです。
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素敵な図書館ですよね。知らずに北投に行き思いがけず見つけたのでした。FBでシェアさせていただきました。
返信削除2019年5月10日、再訪しました。温泉街のど真ん中に、こんな素敵な市民のための憩いの場所を造るなんて、台湾人恐るべしです😄‼️何時間でも居たくなるような、そんな図書館です。台北にいらしたら、淡水行きの途中に、北投駅で下車なさって、白濁したお湯♨️と、素晴らしい北投図書館を、是非堪能なさって下さい。 野田邦子
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