実際に行ってみると黃さんが夜間の見学を勧めてくれた訳がすぐに分かりました。素晴らしいライティングです。これは昼間来るより夜の方が遥かに印象的です。
ここは日本時代は台南の銀座ともいえる繁華街だったそうです。角地という恵まれた立地条件を活かしたファサードです。1932年開業ですのでアールデコ(1925年様式)の影響がかなりあるように思われます。
台湾らしく広がりのある騎樓が設けられています。外壁は当時の最新流行だったスクラッチタイルと白い塗装の組み合わせです。開口部の格子が日本的な印象です。
正面の脇に入口が設けられています。当時もこちらが入口だったのかどうか少し疑問です。個人的には正面が入口のほうが象徴性が高まっていいと思うのですが。
現在の入口の脇には林百貨店の歴史が記載されています。現在は台南市の文化財にも指定されているそうです。
内部に入るとそれほど天井も高くないこじんまりした空間が広がっています。随所に見られる飾り欄間が日本の座敷をイメージさせているのかもしれません。
鉄筋コンクリート造だそうですが柱梁のディティールなどを見ていると一部には鉄骨造も使われているような印象です。
エレベーターで最上階の5階にやって来ました。鉄筋コンクリート造でスクラッチタイル張のオリジナルの構造に鉄骨とガラスの箱を挿入した構成が見られます。台中の宮原眼科も同じ構成です。
5階から更に階段で屋上階に上がってみると最上階の設計の面白さがわかります。エレベーターとホールが他の施設から独立していて他の店舗などに行くには一旦外に出なければなりません。5階部分に第2の地上を作り上げています。
屋上にも小さな店舗があります。おそらく敷地はそれほど大きくないのですが、様々な仕掛けで多様な空間を創り出しています。へんぽんと翻る「林」の旗が誇らしげです。
屋上には神社の祭壇があり鳥居も設けられています。鳥居の脇にはおみくじと願掛けも受けるという凝りようです。創建時の空間を再現しようとする拘りを感じます。
屋上に設けられた鳥居は戦争中の空襲で笠木が喪失し、その下の貫だけが残っている様子を再現しているそうです。
5階部分にはレストランというか居酒屋が営業しています。創建時はきっと食堂のフロアだったのでしょう。デパートの最上階といえば食堂と決まっていますから。
各界の売り場も特徴的です。全体的には普通のデパートというよりはライフスタイルの提案という感じで誠品書店のような雰囲気です。
開業当時、台湾のデパートしては台北の菊元百貨店と並ぶ最新で豪華な設備を備えたデパートだったそうです。象徴的なファサードや変化に富んだ窓まわりなど設計者の意欲が伝わってくるようです。創建当時はさぞかし話題になったことでしょう。
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