2015年9月26日土曜日

紀州庵を見学しました

迪化街を散策した後、タクシーで紀州庵文学森林の離れを見学しました。最近では台北でも日が落ちるのがずいぶん早くなったので日差しが明るいうちにこの貴重な日本建築をゆっくり見たかったのです。幸いにもこの日は晴れで若干の薄い雲のおかげで上手く天空光が拡散しています。


日本統治時代には料亭として建築され使われていた建物だそうです。長い間修復工事が行われ2014年に工事が完了して公開されたようです。F.L.WrightのLobby邸を思わせる長矩形の平面の建築で屋根架構は入母屋ですが妻側の破風が微かにむくりが付いているのは料亭という艶やかさを感じさせたかった棟梁の配慮かもしれません。


玄関にも引き戸が設けられているのは日本建築としては極めて異例で、創建当時もそうだったのか甚だ疑問です。


もう少し趣きのある意匠でも良いような気がしますが、数寄屋風の作りで大袈裟に作るのは野暮だったのかもしれません。こういったことを想像するのは楽しいですね。


玄関から縁側を回っていくと船着場への渡り廊下が連なっています。重なる庇は日本的な意匠の見せ場ですね。


渡り廊下は当時は河畔の屋形船の着き場のように見えます。河の位置が今より随分変わったのか、あるいはこの建物が移築されたのか、さらには専用の水路があったのか、時間があれば調べてみたいです。


座敷をめぐる縁側が矩に折れる部分にはアイストップで明かり取りの窓があります。欠けた月でしょうか。日本的な意匠ですね。


反対の庭園側に回ると長大な縁側があります。裳階が設けられているので建物の腰の高さがうまく抑えられています。こういう建築を海外で見ると嬉しくなりますね。


縁側の長大なファサードと屋根の造形は本当に美しいです。長いエレベーションが単調ではなく美しさを感じさせるのは日本建築の素晴らしさです。


渡り廊下を職員の方が掃除していました。専門家ではないようですが、こういう気遣いを見るとこの建物が大切に使われていることがわかって幸せな気持ちになります。


既に入場時間は過ぎていたのですが、一緒に行った友人が交渉してくれて掃除をしている時間なら見て回ってもいいよと見学を許可してくれました。十二畳の座敷が四間続いています。様々な宴会の形式に対応したのでしょう。


床の間や付書院の意匠はやや疑問がありますが、ここまで修復できたので良しとしたということでしょう。このエアコンの位置はちょっとがっかりです。


縁側と外側のガラス戸も素敵です。縁側の床板は日本とはちょっと違いますがガラス戸と欄間は日本でもなかなかお目にかかれない見事な仕事です。子供の頃のガラス戸の外の雨戸を戸袋に収める苦行を思い出しました。案内してくれたボランティアの方も同じことを言っていたのがとても興味深かったです。急ぎ足でしたがとても良い見学ができました。また訪れたいですね。

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